後立山(長野) 布引山(2683m)、鹿島槍ヶ岳北峰(2842m)、鹿島槍ヶ岳南峰(2889.2m) 2023年7月22日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:36 大谷原−−1:28 西俣出会−−2:48 高千穂平(標識)−−3:39 冷乗越(県境稜線)−−3:49 冷池山荘−−3:57 テント場−−4:39 布引山−−5:13 鹿島槍ヶ岳南峰 5:15−−5:42 鹿島槍ヶ岳北峰 5:52−−6:22 鹿島槍ヶ岳南峰 7:01−−7:35 布引山−−8:14 テント場−−8:18 冷池山荘−−8:30 冷乗越−−9:09 高千穂平(標識)−−9:52 西俣出合 10:08−−10:46 大谷原

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2023年7月22日 日帰り
天候曇後晴後ガス
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場大谷原に駐車場あり。今年も橋を渡った対岸の駐車場も利用可能だがそれを知らない登山者が多い
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント長野県が梅雨明けした当日にいつもの赤岩尾根経由で高山植物開花ピークを狙って今シーズン最初の鹿島槍ヶ岳へ。夜中まで激しい雨が降っていたが日付が変わったくらいから止んでその後は雨に降られなかったが、午前の早い時間帯からガスが上がってきた。狙い通り高山植物は開花のピークで楽しませてくれた。


鹿島槍ヶ岳北峰から見た鹿島槍ヶ岳南峰
GPSの不調(暴走)で下山時の鹿島槍ヶ岳南峰から布引山までの間のログが欠損している


大谷原駐車場 西俣出合の堰堤トンネル
西俣出合の新標識 高千穂平の標識。正確には高千穂平ではない
一部笹がはみ出して朝露で濡れてしまった 標高2420m付近。ガレ場のトラバース
冷乗越(標高2440m) 冷池山荘。発電機のエンジン音が聞こえなかった
テント場は霧の中。10張弱のテントがあった 森林限界を越えて少ししてガスを抜けた
滝雲がかかっている場所がガスの中 布引山山頂
南峰への登り 鹿島槍ヶ岳南峰山頂
鹿島槍ヶ岳南峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
休憩無しで北峰に向かう ツガザクラ
ミヤマシオガマの花と葉。花のてっぺんが角のように上に飛び出しているのと、葉に細かな切れ目が入っているのがタカネシオガマとの違い
ミヤマダイコンソウの花と葉。花はミヤマキンバイと微妙に違うがぱっと見では分かりにくい。でも葉っぱは丸いので容易に区別可能
コケモモ シコタンハコベ
ヨツバシオガマの花と葉。葉は輪生で4枚出ているのが典型的な形(必ず4枚というわけではない)
シナノキンバイの花と葉。「キンバイ」の名が付くがキンポウゲの仲間。葉っぱはキンポウゲでミヤマキンバイの三つ葉とは全く異なる
鞍部の雪渓 北峰の登りにかかる
コイワカガミ チングルマ
アオノツガザクラ ハクサンチドリ
ミネウスユキソウ 北峰分岐
イワツメクサ イワベンケイ
イワウメ。もうほとんどおしまい 鹿島槍ヶ岳北峰山頂
鹿島槍ヶ岳北峰から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
カクネ里雪渓、いや、正確には氷河 南峰に戻る
ハクサンイチゲ キバナシャクナゲ。僅かな咲き残り
セリ科の何か ツガザクラ
タカネヤハズハハコ 標高2800m付近
ミヤマクワガタ ミヤマクワガタ
開いていないがたぶんヒメクワガタ イブキジャコウソウ
テガタチドリ 花が縦に付くのはイワオウギ
ミヤマキンバイはもう終盤 急登。ここが凍ると特に下りが通過困難になる
シコタンソウ 南峰再び
鹿島槍ヶ岳南峰から見た常念岳、大天井岳、槍穂
鹿島槍ヶ岳南峰から見た扇沢周辺の山と裏銀座の山
鹿島槍ヶ岳南峰から見た種池山荘 鹿島槍ヶ岳南峰から見たキレット小屋
鹿島槍ヶ岳南峰から見た針ノ木岳 下山開始
イワツメクサの花と株全体
タカネツメクサの花と株全体
チシマギキョウとイワギキョウ。毛の有無で判別する。毛があるのはチシマギキョウ
東斜面の離れた場所にミヤマキンポウゲのお花畑 イブキジャコウソウ
イワオウギ テガタチドリ
クルマユリの花と葉。葉の一部は写真のように輪生している
ツマトリソウ 布引山を見下ろす
葉の形状からおそらくミヤマオトコヨモギ 花の付き方、ガクの形状からリシリオウギらしい
イワベンケイ シコタンソウ
花数が少ないがイワオウギ 葉の形状からタカネヨモギ。葉が細かく切れ込んでいる
ハクサンフウロ ミヤマアキノキリンソウ
ハクサンシャクナゲの花と葉。花はハクサンシャクナゲとアズマシャクナゲは見分けがつかないが、葉の付け根で両者を判別可能
ハクサンシャクナゲ タカネバラ
ミヤマキンバイ 布引山からの下り
今年初のヤマハハコ ゴゼンタチバナ
ミヤマバイケイソウかと思ったら違ったようだ。種類不明 キヌガサソウ
ミヤマキンポウゲの花と葉。葉は上部と下部で形状が異なり、上部は細く切れ込みが少ないが下部はシナノキンバイと同じ形
ショウジョウバカマ ナナカマド
ミヤマキンバイっぽいが違うような・・・ アオノツガザクラ
モミジカラマツ
マイヅルソウ たぶんヒメクワガタ
ハクサンフウロ ネバリノギランかなぁ?
花はミヤマキンバイだが株全体の様子は違う。ミツバツチグリか? チングルマ
小さな池 コバイケイソウ。ほぼ花はおしまいだった
ミツバオウレン ウサギギク
アカモノ ニガナ
冷池山荘のテント場。全て撤収して空っぽ
今年初のエゾシオガマ 冷池山荘。帰りも発電機の音が聞こえなかった
冷乗越への登り返し 冷乗越付近のタカネバラ
冷乗越 赤岩尾根コースに入る
コイワカガミ ミヤマダイモンジソウ
ガレ場 ガレ場の標識。普通なら鎖は使う必要はない
おそらくクロウズコ シロバナニガナ
ママコナだが細かな種類は私には分からない たぶんキソチドリ
大ザックを背負った男性 徐々にガスが上がっていく
ネバリノギランっぽいが自信なし **ショウマ辺りか。ユキノシタ科は確実
ミヤマアキノキリンソウ 白樺平
シモツケソウ。まだ咲き始め
今年初のミヤマホツツジ。象の鼻のよう オオコメツツジ
今年初のハクサンオミナエシ 高千穂平の標識だが正確には2045m峰
コバノイチヤクソウ。赤岩尾根では初めて見た オオカニコウモリ。まだ蕾か?
ヨツバヒヨドリ こんなところにもエゾシオガマ
タテヤマウツボグサ 開けた場所で晴れると暑い!
標高1730m付近の遭難慰霊レリーフ。ここから僅かに下った場所に岩屋がある
大冷沢を見下ろす アジサイ。天然ものか?
タマガワホトトギスの花と葉。沢沿いのような少し湿った場所にある
西俣出合の標識 アカバナっぽい
堰堤トンネル。中は涼しくて出たくなくなった(笑) ソバナ
刈り払われた道 ほぼ終わりのオニシモツケ
林道終点 大冷沢に下る道を刈り払っておいた。水浴び用
刈り払いに使った安物の鎌。歯があると固いものの切断に有利 林道終点のコゴメグサ。細かな種類は私では判別できない
軽ワゴンが上がっていった。工事車両以外を見たのは初めて タイムリーな情報ではないが仕方なかろう
林道 ソバナ
ツリフネソウ。キツリフネは見かけなかった アカバナっぽい
鹿島槍ヶ岳東尾根入口。砂防ダムの横にある。良く見ると斜面に目印がぶら下がっている
ゲートに近い左岸側駐車場 ゲートから遠い右岸側駐車場


 週末金曜日には北陸が梅雨明けしたが長野はまだ。前線は北上しているがここ数日は上空に寒気が入って大気の状態が不安定で局地的な雷雨が毎日のように降っている。土日の予報も同じようであるが雷雨が来るのはお昼前くらいであり、早朝ならば天気は大丈夫だろうと予想。いつもの夜間登山で日の出直後に山頂に達して午前中に下山すれば問題なしだろう。

 高山植物の開花がそろそろピークを迎えたはずであり、花が多い鹿島槍ヶ岳に向かうことにした。今年初である。ルートはいつもの赤岩尾根。ネットの情報で既に赤岩尾根上部の雪も消えて完全夏道だと分かっているのでアイゼンは不要だ。それよりも暑さ対策の方が重要であろう。ネットの予報では標高3000mで風は数mと弱風で気温は+7℃前後。上空の寒気の影響か、下界は暑い予報でも天界は快適だ。

 夕方から雷雨がやってきて登山口の大谷原に到着時は大雨状態。右岸側駐車場には数台の車ありだがゲートに近い左岸側駐車場はいつものように空っぽであった。酒を飲みながらパッキングをしているとさらに雨が激しくなってきた。予報では夜半には上がるはずであるが心配になるほど。

 山頂で日の出を迎えるためには午前0時出発なのでその30分前に目覚ましをかけて寝たが、午後11時半でもまだ強い雨が降ったままで再び寝て午前0時に起床。雨はかなり弱まっていてじきに上がるだろうと飯を食って0時半過ぎに出発。いつの間にか少し離れて1台の車が駐車していたが、あの雨の音では気付かないのも仕方なしだろう。

 傘を出したのは最初だけで、たぶん雨は上がっていたのだろうが樹林の葉から落ちてくる水滴だったのだろう。すぐに傘を畳んでザックに収納。気温は高めで湿気が猛烈に高くてジメジメ状態。高度が上がるまでは大汗をかかされそうだ。

 今回は雨で草藪が濡れて大冷沢に下れない可能性が高いので出発時にペットボトルを満タンにしておいた。鹿島槍は距離も高低差もあるため水はいつもの2倍近い500ccとしたが、実際にはここまでは使わなかった。

 林道終点から堰堤トンネルへのアプローチ道が刈り払われていないとびしょ濡れになってしまうと心配していたが、今年は既に刈り払われていて一安心。おそらく先週の3連休前に整備したのだろう。赤岩尾根に取り付いて本格的な登りにかかると汗が吹き出し、登りから濡れタオルを首に巻いて片手には扇で扇ぎながら歩いた。周囲の樹木の葉がまだ濡れているのでタオルの水分補給はペットボトルを出す必要はなく楽であった。

 往路は真っ暗な時間帯なので写真撮影は行わなかったが、尾根の下部から中部にかけて出てきた石楠花の葉を観察したらアズマシャクナゲであった。この標高では石楠花の花のシーズンは6月なので既に終わって花は皆無だったが、アズマシャクナゲとハクサンシャクナゲは花で見分けるのは相当難しいようだ。しかし葉っぱの付け根を見れば容易に判別が可能で、アズマシャクナゲは滑らかに柄にくっついているが、ハクサンシャクナゲは直角に近い角度でくっついている。比較写真を作成したので参照してほしい。

 石楠花の花は無かったが他の花はいくつか見かけたが、撮影は帰りに行うことにして先を急ぐ。高千穂平の標識が立つ2045m峰に出ると樹林が開けて空が見えるようになるが、いつの間にか雲が取れて満天の星空であった。あとはこの天気がいつまで続くのかが問題で、おそらく午前の早い時間からガスが上がって稜線にかかるであろう。ただし、歩く分にはガスって日が陰るのは涼しくなるのでいいことであり、下山までに雨が降らなければいい。

 高千穂平の標識より先は樹林が開けるので登山道にはみ出した笹や草木の葉が多くなり、靴や足を濡らすようになる。ただしそんな区間はそれほど長くはない。ここまで高度が上がると気温が下がって汗が引いて快適に登れるようになった。

 白樺平の標識を通過して尾根幅が狭まって岩っぽくなってくるとミヤマダイコンソウが登場。いかにも高山植物っぽい花でありアルプスに来た気分にさせてくれる。ガレのトラバースには全く雪は無く、昨年晩秋の雪が付いた時期には鎖が撤去されていたが、今は鎖が復活していた。ただし注意標識があり「鎖に全体重をかけないで下さい」とのことだが、無雪期なら鎖を使う必要は無い。夏山シーズンにやってくる登山者のレベルは様々のようだ。

 冷乗越で県境稜線に出ると西寄りの風がややあって寒いくらいであり、腕カバーに手袋、毛糸の帽子、ネックウォーマーを装着。周囲に明かりが見えないか確認したが爺ヶ岳方面の光は皆無。柏原新道経由で鹿島槍日帰りの場合はこの時間に稜線にいても不思議ではないが、今日は遅めらしい。冷池山荘やテント場には光が見えていたが、まだ山頂への稜線に光は見えなかった。実際にはその方向には滝雲がかかっていて光があっても見えなったのだが、真っ暗なのでそれは分からなかった。

 一度樹林帯へ下って冷池山荘へ接近しても発電機の音が聞こえない。まさか小屋が営業していないなんてことはないはずだが、ちゃんと小屋内部には明かりが灯っていた。おそらく客が少ないからであろう。小屋周辺には2,3人のみと静かであった。テント場に向かって上がっていくと先行するグループの光が見えたがガスに突入し、テント場ではフラッシュを焚いて写真撮影したら真っ白になってしまった。先行するパーティーは5人くらいで軽装なので小屋から山頂を往復だと思うが、どういうわけか大谷原から休みなしで登ってきた私よりペースが遅いので先行する羽目になり、そのまま山頂まで追い付かれることはなかった。

 登山道が稜線東側から西側に移ると同時にハイマツを抜けて森林限界を再突破。少し進むとガスの層を抜けて晴れのエリアに。上空にはほぼ雲は無いが日の出を間もなく迎える東の空は背の高い雲に覆われて日の出は絶望的だ。当然ながら奥日光の山々も今回は見ることはできなかった。まだ薄暗く布引山付近に複数の光が見えていたが、もうライトが無くても歩ける明るさになっていた。

 布引山への登りにかかると本格的に高山植物が見られるエリアに切り替わる。今の盛りはミヤマダイコンソウでミヤマキンバイは少しばかり残っている。ハクサンイチゲももう終盤。この付近にはクロユリがあったはずでよ〜く探しながら歩いたが今回は発見することができなかった。残念。来週予定している白馬岳に期待しよう。

 布引山には先着していた4人組が記念撮影中。こちらは写真1枚だけ撮影して先へ。布引山より先の登山道には青いザックの1人だけ見えていた。夏山シーズンの週末のこの時間にしては人が確実に少ないのは、天気が不安定で金曜日から入山している登山者が少ないからであろう。先行者とは徐々に距離が縮まったが、その理由は先行者は大ザックだったから。明らかに長期縦走の荷物量で、日帰り装備の私とは比較にならない負荷の強さだろう。おそらく次の宿泊地は五龍山荘だろう。

 大ザックの男性を追い越すと前にはもう人の姿は無し。最後のジグザグの急登をこなすと無人の鹿島槍南峰山頂に到着。白馬から大町、安曇野にかけての盆地は背の高い雲海に沈んで見えず、北信の山々、志賀高原、八ヶ岳、南アルプスも雲の下で見えなかった。これに対して富山側は雲が少なく北アルプスの山並みがきれいに見えていた。出発から4時間半と思ったよりも時間がかからず体力的にはまだ余裕があるので、写真撮影だけして北峰に向かうことにした。

 北峰への下りは岩場が多く要注意だが、高山植物の種類がこれまでとはがらりと変わる。特にミヤマシオガマは南峰まででは全く見られなかったのがたくさん見られる様になる。シコタンハコベがあるのもこちら側だけで、シコタンソウの大きな群落があるのもこちら側だけ。鞍部付近ではチングルマやコイワカガミの群落を中心とするお花畑が広がる。タカネヤハズハハコが群落を成しているのは珍しい光景だ。

 キレット小屋方面の分岐を通過して北峰山頂に向かう。爺ヶ岳中峰に比べて標高差があるが、それでも約70mなので山頂まで10分ちょっとである。無人の北峰山頂に立つと南峰が大きく北峰の影がちょうど南峰に落ちている。東直下にはカクネ里雪渓、いや、正確にはカクネ里氷河が見えている。長野県内で最初に確認された氷河であるが、そもそも規模が小さいので温暖化が進むと消えてしまうかもしれない。

 登山口からここまで5時間かかったので無人の山頂で休憩。パンを齧る。大ザックの男性が南峰からゆっくりしたペースで下っているのが見え、南峰山頂には人の姿も。私が追い越した後続部隊が続々と到着しているようだ。私が南峰に戻る頃にも賑わっているだろう。10分ほどの休憩で南峰に向けて出発。

 帰りも花の写真を撮影しながらなのでペースが落ちるが、今回は花を見るのが主目的なので気にしない。南峰以南でも見られるがミヤマクワガタは南峰〜北峰間の方がずっと多く見ることができる。ピンボケ写真しか撮影できなかったので掲載しなかったがミヤマタネツケバナの小さな花は、今回のコースではここでしか見られなかった。

 大ザックの男性とすれ違って急な北斜面の岩場を登り返す。晩秋にここが凍ると特に下りでは通過困難になる場所だが、夏場は三点支持を守れば危険はない。南峰直下で3人パーティーとすれ違って南峰山頂に再び立つと、今度は10人近い登山者で賑わっていた。私も含めてだが大多数は軽装での鹿島槍往復のようであり、八峰キレット方面に縦走するであろう装備の人は少数派であった。まだ時刻が早いので日帰り登山者は私だけと思われるが、そのうちに柏原新道経由のトレランナーが上がってくるだろう。

 休憩中に日が徐々に高くなり体感温度が上がって半袖のままでも快適になってきた。顔が日焼けするのは必至なので麦わら帽子を被る。予想通りに時間経過と共に信州側の雲海が徐々にガスになって稜線へ上がってくるようになり、冷池山荘付近は見えなくなってきた。山頂がガスに覆われるまでにそれほど時間はかからないかもしれないが、夏山シーズンはこれが普通なので仕方ない。夏場に展望を楽しむ確率を上げるのは早朝に山頂に立つしかない。

 30分強の休憩で午前7時に下山開始。大谷原到着は10時〜10時半くらいだろうか。帰りは花の撮影をしながらなのでいつもより時間がかかるからもう少し遅くなるかな。この時間帯はまだまだ登ってくる人が多い。

 ガレた急な下りが終わって稜線らしくなると両側がお花畑に。お花畑と言っても稜線の西と東では植生が全く異なる。東側は遅くまで残雪があるエリアで季節風がブロックされることもあって背の高い通常の草のような種類が多い。対して西斜面は風が直接吹き付けるからであろうか、全て地面を這うような背の低い種類である。シコタンソウなどは小さすぎて目立たない存在だ。ここに生えるハクサンイチゲも妙に背が低いものばかりである。イワオウギも他で見かけるものよりも背が低い。

 今回はイワオウギ以外のイワオウギの仲間、つまりシロウマオウギ、タイツリオウギ、リシリオウギが混じっていないか注意しながら写真撮影したが、リシリオウギと思われる個体を1株だけ発見することができた。イワオウギの花は縦長に付いているが、それ以外の3種類は花の付き方が異なるので見分けることが可能。3種類を見分けるのは結構難しく今の私では判別できないかもしれない。シロウマオウギは花が真っ白なのが特徴で、それ以外はイワオウギを含めて薄いクリーム色である。タイツリオウギとリシリオウギの判別は花の根元のガクで見分けるそうで、タイツリオウギはガクの一部が鋭く尖っているのに対し、リシリオウギは尖ってはいるが角度が広いとのこと。今回見たのはリシリオウギの特徴に該当した。

 布引山の東斜面は背丈の高い種類のお花畑でハクサンフウロの群落あり。南側はハクサンシャクナゲ。森林限界を越えてハイマツが広がるこの高さでキバナシャクナゲでないのは珍しいような。タカネバラも見られた。ジグザグに下って水平の尾根に達するとハイマツの影にコケモモが多数見られる。森林限界を割り込んで樹林帯に入ると日陰で良く見られる花が登場。ゴゼンタチバナ、マイヅルソウが該当する。ヤマハハコやキヌガサソウは日陰を好むわけではないが日影でも見られる。

 登山道が稜線東側に移るとお花畑に変わり、ミヤマキンポウゲやシナノキンバイ、ハクサンフウロ、チングルマ、アオノツガザクラ、モミジカラマツなど。花はミヤマキンバイだが株全体を見るとミヤマキンバイとは違う種に思える株もあったので、キジムシロだろうと葉っぱを見ると全て三つ葉。このパターンで該当しそうなのはミツバツチグクリくらいだが、飯縄山で見た個体と比較すると花が大き過ぎるような気がする。ここは遅くまで残雪があるのでこの時期でもシラネアオイが咲いているはずだが今年は見られなかった。コバイケイソウもほとんどおしまいだった。

 テント場に到着するとテントは皆無。今日はこれから上がってくる登山者のテントで満杯に近くなると思う。ここまで下るとエゾシオガマが見られる様になる。冷池山荘前もまだ閑散としていて静か。往路でもそうだったが帰りも発電機のエンジン音が聞こえなかった。まさか太陽光発電+蓄電池に切り替わったとか?

 樹林帯の最低鞍部から登り返して再び森林限界を越えると風が抜けるようになり涼しくなる。既にガスの中に入っているので直射日光は途切れ途切れに差す程度だが、気温は上昇していて風が無い状態では登りでは暑さを感じるくらいであった。この時刻はまだまだ登りの人とのすれ違いが多いが、大半は柏原新道から上がってきた人だろう。

 冷乗越で赤岩尾根に入ると早速一人とすれ違う。ガレ場のトラバースでも2人ほど。たかが3人だが最上部でこの数は赤岩尾根では多い方でありちょっとびっくり。再び尾根に乗ってからもすれ違った人が数人いたが、私の服装である半袖半ズボンに首に濡れタオル+扇での強制尾風冷でも下りで暑いくらいなので登りは大汗をかかされただろう。標高が落ちるに従って気温が上昇し、最後は下りでも大汗をかかされて濡れタオルが大活躍した。

 赤岩尾根上部ではミヤマダイコンソウ、コイワカガミ、ハクサンシャクナゲ、ミヤマダイモンジソウ、ニガナ、シロバナニガナ、ママコナなどが見られた。少し下るとミヤマアキノキリンソウ、シモツケソウ、ミヤマホツツジ、オオコメツツジ、ハクサンオミナエシなどが目立つ存在だ。高千穂平の標識を通過して樹林帯に入るとヨツバヒヨドリが多くなり、昨年までは気付かなかったコバノイチヤクソウ、オオカニコウモリ、エゾシオガマ、タテヤマウツボグサを発見した。まだまだ探せばあるものだなぁ。

 赤岩尾根末端付近ではアジサイとタマガワホトトギスが登場。アジサイは天然ものなのか人が植えたものなのかは不明である。堰堤の中を通るトンネル内は非常に涼しくて快適で外に出たくなくなった(笑) トンネル前後ではソバナ、終わりかけのオニシモツケが咲いていた。

 林道終点でザックを置いて大冷沢へ水浴びに向かう。昨年は沢に下る刈り払いされた道があったので今年も期待したがまだ健在であった。ただし体に触れる草木のはみ出しがあるので持参した鎌で藪を刈っておいた。刈り払いは完璧ではないが雨で草が濡れてもさほど体が濡れないくらいには刈っておいた。沢の水量は豊富で汗臭くなった濡れタオルを洗ってから全身を拭ってさっぱりした。これをやると体感的にかなり涼しくなる。

 再びザックを背負って歩き出す前に林道終点広場の脇を観察。毎年ここではコゴメグサが見られるが、今年は既に花を付けていた。林道を歩き始めてすぐに軽ワゴン車が上がっていったが、この林道で工事関係の車両以外を見たのは初めてである。おそらく冷池山荘の関係者だろう。

 林道は木陰が多くて助かる。稜線ではガスがかかっていたが山から少し離れると雲が無いらしい。沢沿いを吹き抜ける風が心地いい。林道歩きではすれ違う人は無いまま大谷原駐車場に到着。ゲートに近い左岸側駐車場の車は私のを含めて3台だけでガラガラであった。

 車の中で着替えて軽く腹ごしらえしていると下ってきた登山者あり。対岸の駐車場は10台程度でこちらも空きがあり、赤岩尾根の人の少なさはいつもの通りであった。おそらく柏原新道の駐車場は満杯でスノーシェッドを下った駐車スペースも埋まっていることだろう。

 

山域別2000m峰リスト

 

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